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失われたアルバム:あなたが(たぶん)知らない10のアメイジング・レコード

   もしもあなたが私のように人生の大部分を音楽に捧げてきた方なら、きっと今までたくさんのレコードを聴いてきたことでしょう。リリース時からの時間的な経過や、大がかりなプロモーションの波に飲まれてひと知れずその姿を消していった音楽は数多く、私はそんな音楽に対して親密な気持ちを抱くことがしばしばあります。

我々多くのリスナーは、長年聴き込んできたお気に入りの作品を持つ一方で、その他の多くの作品のことは忘れ去ってしまっているのではないでしょうか。実際のところ、レコード会社が次々と取るに足らないアルバムを世に放ち続けることで、多くの音楽ファンは素晴らしい作品を素通りしてしまっているでしょう。真にクリエイティブな音楽は、売り上げ重視のレコード会社にとってはリスクの大きすぎる商品になってしまうかもしれません。しかし幸運なことに、そういった事情で日の目を浴びなかった隠れた音楽は、感受性豊かなリスナーにとっては至福の一枚として輝きを放っています。

 音楽を愛し、“失われたアルバム”を探し出す醍醐味の一つは、素晴らしい作品に出会った時に、いったいどうしてこの作品を耳にするのに30年もの時間がかかったのだろうとある種の愕然と、また興奮する気持ちを味わうことです。この世にリリースされた全ての音楽を聴いたことがある人はいないにしても、ときどきこんな風に思わずにはいられません。なぜ、こんなにも多くの人々がDuran Duranのアルバムを繰り返し聴いたことがあるのに、Pink Industryのアルバムは彼らの人生に一度も登場しなかったのか。つまり、あなたの好きなジャンルの中にはより優れた作品が存在し、それらの音楽はあなたに発見され、擦り切れるまで聴いて、そして永く大切にされるのを待っていると思うのです。時代や既成概念などとは関係なく。

 私はしばし考えを巡らせて、私がこれまで聴いてきた音楽のなかでみなさんとシェアしたいものを選んでみました。これからご紹介する10枚のアルバムは、リリースから長い年月を経てハングリーなレコード・コレクターに達に再び見出されるまで、道端に葬られ、死者のように忘れ去られてきたアートの素晴らしい例だと思います。失われた作品と出会い、新たな音楽の旅を始めましょう。

この“失われたアルバムは、みなさんの時間をきっと無駄にはしないでしょう

MC 900 Ft. Jesus's lost albums include 'One Step Ahead of the Spider' 

MC 900 Ft. Jesus – One Step Ahead Of The Spider

MC 900 Ft. Jesusがたどったキャリアの軌跡は悪くないように思えます。非常に出来の良いデビューEP盤に、どちらかといえばインダストリアルな印象を受けるラップ・ジャズ テイストに満ちた素晴らしいファースト・アルバムが続き、それらのクオリティを保ちつつさらに制作とビジョンを絞り込んだセカンド・アルバムへと扉が開かれます。セカンド・アルバムのリリースから3年後には、Mark Griffinが「One Step Ahead Of The Spider」というアルバムを世に放ちましたが、我々世代に見落とされ、忘れられてしまいがちな一枚かもしれません。この素晴らしい作品をリリースしたAmerican Recordsは、この作品のリリース当時に会社が変革期にあったらしく、このアルバムのプロモーションを熱意を持って行うことができなかったという話があります。このような状況と、Mark Griffinが当時新しいサウンドを追求していたことが相まって「One Step Ahead Of The Spider」はどちらかというと人々に忘れられがちな運命を背負ってしまったように思えます。しかし勘違いしないでください。このアルバムは耳にすれば、とてもオリジナルティに溢れ、おもしろく、感動的で、踊れる、知性さえも感じさせる一作なのです。本作は先行のアルバム2作に続く自然な流れのなかに現れたものでありながら、Griffinが開拓しようとするその新しいサウンドは圧倒されるものでした。大部分では、初期のアルバム2作に見られるようなインダストリアルな影響は影を潜め、代わりに即興的なヴァイブを取り込んだジャズ・パフォーマンスの存在感が増しています。この傾向は初期の作品にも見られましたが、この作品ほど顕著ではありませんでした。長年にわたってこのアルバムを聴き込むことで、私はGriffinが当時どれだけ先を走っていたのかがようやくわかってきました。このアーティストが持つ確固たるビジョンは、リスナーにはまったく理解されずにきたのです。このアルバムは今年で発売から23年を迎えますが、今が一番輝いているように思われます。残念なことに、近年初のライブを今月ダラスで敢行したものの、音楽ビジネスに幻滅したGriffinがその後、新作を発表することはありませんでした。もしこの記事を目にすることがあったら、Mark、どうか新しい音楽をまた作ってください。私たちはようやくあなたの音楽を享受する用意が、今できているのだから。

 

Pink Industry's album 'Low Technology' is an example of a lost record

Pink Industry – Low Technology

冒頭でも触れましたが、私はこのバンドのことをまったく知らないという人に出くわすと、ちょっとショックを受けてしまうのです。80年代にリイシューされたすべてのリリースと、世に知られぬニューウェーブ/ポスト・パンクの良作を求める人々に、このバンドがこんなにも認知されていないのは非常に嘆かわしいことです。ここでひとつ、その流れを変えてみようではありませんか。Big In JapanにそのルーツをもつPink Industryが活動したのはわずか数年の間でしたが、彼らの音楽はとてもキャッチーなシンセ・ポップに、少しゴスやパンク・テイストが組み合わせられたおもしろいものでした。最終的には「Siouxsie and The Banshees」、「 Cocteau Twins」、「Colourbox」のハイブリッドのような抗しがたい作品を発表しましたが、その内容は3分程度の短めの曲が中心でした。彼らのアルバムの数々は、どれも新鮮味があって、インスピレーションを享受して作られたものでした。「Low Technology」は彼らのデビュー・アルバムにして、彼らの後続作品に決してその王座を譲らないものであったと言えるでしょう。

 

The 7th Plain album 'Playing With Fools' DIY style disc sleeve

The 7th Plain – Playing With Fools

この世にLuke Slaterのリリースされていないアルバムが存在するということがなんとも信じがたいので、この作品を今回のリストに入れることにしました。まったく惜しいことに、このアルバムは彼の表現がもっとも充実した時期のものであるにも関わらず、リリースされていないのです。だから、私は実際にこの作品を耳にしたことがありません。いったい誰が耳にしたことがあるのでしょう。誰かがこの作品をリリースしてくれはしないかと願うばかりです。60年代に再プレスされた「Fleetwood Mac’s “Rumours」は廃盤となってしまったので、現状Luke Slaterのアルバムはプロモ盤5作のみが流通していることになります。何かが間違っています。これはまったく大きな間違いです。

 

Gene Clark lost album 'No Other'

Gene Clark – No Other

実のところ、私はつい5年前まではこのアルバムのことを知りませんでした。しかし、この音楽に出会い、自分がこのアルバムを知らずにそれまで生きてきたことがなんだか信じられません。「No Other」は、リイシュー・レーベルの4 Men With Beardsによって今から5年前に再プレスされたことで、ある意味復活を遂げました。これは私たち皆にとって素晴らしい出来事だと思います。このアルバムの制作秘話はこの作品の価値をより一層押し上げるかもしれません。Clarkはレコーディングに膨大な時間をかけたため、彼のリソースを使い果たし、Asylum Recordsにも負担をかけた挙句、最終的にアルバムの興行が失敗に終わったことを知り、アルコール中毒になってしまいました。このアルバムの興行的な失敗の一因は、当時レコード会社の重役であったDavid Geffenがこの作品をマーケットにどのように打ち出せば良いかわからなかったことだと思います。このアルバムはシングル・リリースされていない数々の曲で構成されていて、その歌詞は非常にエモーショナルなものでした。悲しいことに、実際「No Other」はリリースされるやいなや人々にすっかり忘れ去られてしまっていたのです。リリースから歳月を経て今日この音楽を聴く者としては、この作品が非常に深遠な世界を持っていて息をのむほどによく作られていていることがわかります。どの点を取っても完璧で、カントリー、サイケデリック・ロック、ポップ、ロック、ソウルなどの音楽ジャンルが自在に組み合わされています。Clarkは他のパフォーマーの追随を許さないほどに彼が内包する自身のアート性を一音一音に染み込ませ、すっかり表現しきったのです。Clarkが“born from pleasure, and chiseled by pain(喜びから生まれ、痛みによって形作られていく)”と歌うとき、あなたは涙無くしてはいられないかもしれません。もしリスナーのあなたがこの曲を聴いてドライでいられるとしたら、”ヒューマニティ・カード”を一度チェックしたほうが良いかもしれません。カードが期限切れになっているかもしれませんよ。痛みや深い悲しみ、喪失などを体験したことがある人なら誰でも、「No Other」から私がここで書いた以上のものをきっと見つけることでしょう。

 

Angel City's album 'Darkroom'

Angel City – Darkroom

オーストラリアでは有名ですが、その他の国々ではまだあまり知られていない(オーストラリア国内ではThe Angelsとして知られている)Angel Cityの1980年のこのリリースからは、クラッシック・パワーロックとパンクをまたにかけ、燃え盛るような力強い躍動が感じられます。Guns N’ Rosesのような80年代の多くのロックバンドが彼らから強い影響を受けたと公言しているように、あなたにもきっとそれがわかるはずです。このアルバムの音はかなり薄くドライで、まるでバンドがあなたの部屋のスピーカーから這いだしてくるような驚きを感じられるでしょう。

Howie B.'s under-appreciated album 'Music For Babies' cover artwork

Howie B. – Music For Babies

  人々に見落とされてきた90年代の数多くのアルバムのうちの一枚です。実に様々なジャンルに手を出したHowie Bは、それらを45分間の作品として見事に結実させ、私たちに届けてくれました。多くの出来の良い音楽と同じように、緊張感と真摯さをもって制作された「Babies」には、非常に遊び心のあるトーンが用いられています。不穏なシンセサイザーとかすかに聞こえるブロークン・ビートが、バウンスするメロディと激しいベースラインの上に響きます。このアルバムは、いったい次はどんな展開が待っているのだろうかとそわそわした気分にさせられるものの、自由で楽しい”遊び場”の雰囲気に満たされています。Howie Bはその活動期間に数々の良作を生み出しましたが、「Music For Babies」はその最たるものではないでしょうか。

 

A.R. & Machines' album 'Die Grüne Reise - The Green Journey' cover artwork

A.R. & MachinesDie Grüne Reise – The Green Journey

  世に知られぬクラウト・ロックというジャンルの作品については、私は(ほかの大勢の方々がそうであるように)おそらく何ヶ月間でも語り続けられることと思いますが、今回はこのバンドをリストに入れてみようと思います。A.R. & Machinesは、近年数作のリイシュー盤のリリースによって以前よりも人々の認知を得ているように思えますが、大方のリスナーは、このアルバムの他の追随を許さない魅力に気づいていないのではないでしょうか。この作品からは新たな音楽アプローチを開発しようという試みが見受けられ、アルバムの奇妙なアルバム・カバーは、その内容であるこれまた変わった音楽を実によく表しています。数分間にわたる現実離れした感のあるヴォーカル、その後に5分程度のサイケ・ジャムが続く The Green Journeyの「Die Grüne Reise 」を聴けば、新たなサイケデリック・レコードを発掘したところで、ずっと以前に比べ物にならないほどおもしろい作品を作っているアーティストがいたことを思い知らされるでしょう。

 

Tim Maia album 'Racional' sleeve artwork

Tim Maia – Racional Vol. 1

  Tim Maiaは特筆に値する人です。この人の歩みについては、Googleでそのバイオグラフィーを検索する価値があります。彼のキャラクターを一旦置いておいたとしても、彼の音楽には人生を変えてしまうようなところがあります。70年代に祖国ブラジルでなんとかキャリアを軌道に乗せると、Maiaはジャズ、ファンク、ロック、ソウル、ディスコと彼のテイストに合うものは何でも取り入れていきました。彼は作品に宗教的な含みを持たせる傾向がありました。どんなに頑なに無宗教を主張する人であっても、彼が流れるように生み出すその確固としたグルーヴとむき出しのファンクに一度触れれば、それを祝福したくなるのではないかと思います。「Racional」はMaiaのメッセージを余すことなく含み、100%彼自身から湧き出た音楽で満たされた、このミュージシャンの音楽的なファンダメンタルを網羅したおそらく最高の一枚でしょう。彼の足跡を支持してもしなくても、彼の音楽の真摯さはすべてを超えて、あなたに届くことでしょう。

 

Justin Warfield's album 'My Field Trip To Planet 9' cover artwork

Justin Warfield – My Field Trip To Planet 9 

  90年代にリリースされ、忘れ去られた数多くのヒップホップの中でも「My Field Trip To Planet 9」はまったく間違った時代に生まれてしまったものの一番良い例でしょう。この作品が放つメッセージに関しては、90年代という時代に非常にマッチしていて、多かれ少なかれこのアルバムはドラッグ・カルチャーや当時のレイブ・カルチャーへのラブレターであるところが大きいように思えます。音楽的なことに関していえば、Warfieldは四つ打ちのビートを並べるよりも、ポスト・レイブなヒップホップ・バージョンをレーザー光線のようなハイなヴァイブと合体させることに彼の技術とエネルギーを注ぎ込んだように思えます。結果として、彼は彼の作品のリミックスを行うChemical BrothersDavid Holmesのような強者たちをダンスフロアに送り出すことになりましたが、音楽のマジックが現れるのはこのアルバムにおいてです。なめらかに変化する音楽に正確なヴォーカル、そしてクリエイティブなサンプリングが用いられた独特の素晴らしいヒッピホップアルバムをWarfieldは私たちに届けてくれたのです。

 

Rei Harakami's 'Lust' album cover artwork (Japanese release)

Rei Harakami – Lust

2005年に日本国内限定でCDリリースされたのは、レイ・ハラカミによって静かに放たれた、世界でもっとも複雑に編成されたエレクトロ・アルバム。「Lust」がなぜ日本にしか存在しないのか、それは私の知り得るところではありませんが、手を尽くしてこの作品にたどり着いたとき、あなたはきっと筆舌に尽くしがたい報いを得られるはずです。彼のこの作品は基本的にはハウスではありながら、シンセサイザーとパッド音が織り込まれていることでまったく新しい音楽のように響きます。私はこの作品を10年以上前に手に入れられたことを非常にラッキーだと思っていますが、正直なところ、アルバムバージョンはそこまでおすすめできません。「Lust」は2016年にレコードとしてリイシューされています。本当に欲しい!もし誰かが、このお宝レコードをバッグに忍ばせていたら、私は人目も忍ばずそのバッグに手を伸ばしてしまうかも。。。

(※後日談:日本でリリースされた「Lust」のレコードを手に入れました!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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