1970年 ベスト・アルバム

1970年は激動の年でした。世界はヴェトナム戦争、イスラエル・パレスチナ紛争という国際問題に頭を抱えていました。

ベトナム戦争に対するプロテスト (抗議活動) はアメリカの主要都市や大学のキャンパスで激しさを増し、ケント州立大学では、オハイオ州警備隊の発砲により4人の学生が亡くなるという痛ましい事件が起こりました。また、パレスチナのテロリストによって航空機が次々とハイジャックされ、世界の注目を集める事となりました。

当然の事ながらポピュラー・ミュージック界にもこの混沌した世界を反映する作品、事件が起こります。クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングはケント州立大の銃乱射事件に対する楽曲「オハイオ」を、事件から1週間以内にリリースしました。そして、音楽界は1970年にジミ・ヘンドリックスとジャニス・ジョプリンの死、そしてザ・ビートルズの解散により、大きな損失を被ります。

今回ご紹介する1970年にリリースされたアルバムは、当時の雰囲気や世相を反映したロック、ジャズ、ソウルなどの名作達で、音楽史を変えたと言っても過言ではない重要作品も含まれています。ブラック・サバスの登場によりヘビーメタルが大衆(音楽)に持ち込まれ、The Stoogesによってパンク・ロックの種が撒かれ、Miles Davisが独創的な想像力でジャズに変革をもたらした時代です。

今回、Discogsユーザーがコレクションしている、またはウォントしている人数などのデータから1970年の重要作品を選盤しました。当時を知らない方にとって、1970年当時の空気を理解するのには十分な作品達だと思います。

fThe Grateful Dead - American Beauty album cover

#25. The Grateful Dead – American Beauty

グレイトフル・デッドは1970年に2枚のアルバムを発表しています。この「アメリカン・ビューティー」の対になるアルバム「ワーキングマンズ・デッド」が、今回のリストの26位に入っていたとしても異論はないでしょう。このアルバムでは、彼らのソングライティング・スキルが遺憾なく発揮されており、Box of Rain、Ripple、Friend of the Devil、Sugar Magnoliaなどの佳作が収録されています。グレイトフル・デッドを聴き始めようという方にはおすすめの入門アルバムです。

Curtis Mayfield - Curtis album cover

#24. Curtis Mayfield – Curtis

ザ・インプレッションズを率いた後に発表されたカーティス・メイフィールドのソロ・デビューアルバムで、ブラック (黒人)・コミュニティからの高らかなメッセージを掲げたソウル・アルバム。このアルバムではファンク、ソウル、オールドスクール R&Bなどの黒人音楽と人種問題を巧みに融合させ、70年台前半を名作と共に疾走するメイフィールドの鮮やかなスタートとなりました。人種問題などの社会問題や困難な境遇の同胞に向けた、哀れみ (思いやり)、ポジティブなメッセージと共に歌い上げた名作です。

John Lennon / The Plastic Ono Band - John Lennon / Plastic Ono Band album cover

#23. John Lennon / The Plastic Ono Band – John Lennon / Plastic Ono Band

このアルバムが持つ生々しい感情が故、時として聞くとことが辛くなってしまうかもしれません。 レノンが彼の (幼少期に負った) 深い痛みを綴った「マザー」は、心に響く一曲です。アルバムの中のほんの一曲と言ってしまえばそれまでですが、この曲は音楽を通したセラピー・セッションと言えるでしょう。このレコードは、ジョン・レノンという男性、そしてアーティストを理解するために重要な作品です。

The Stooges - Fun House album cover

#22. The Stooges – Fun House

ザ・ストゥージーズパンクのゴッドファーザーとして多くの音楽ファンに認識され、それに対して異論を唱える方はそう多くはいらっしゃらないでしょう。ミシガン発のバンドによるセカンドアルバム「Fun House」は、残忍なまでにヘヴィーなロックン・ロールで、あなたを水攻めにした上、傷つけてしまうかもしれません。もちろん良い意味ですよ。

The Who - Live At Leeds album cover

#21. The Who – Live At Leeds

ザ・フーは、ピート・タウンゼンドジョン・エントウィッスルキース・ムーンの主要メンバー3人からなる偉大なロックバンドであり、彼らが作った栄光なる不協和音は、このライブ・アルバムで完璧に捉えられています。 15分にも及ぶ壮大なMy  Generationなどの名曲が収められていますが、カバー曲も捨て難く、特にYoung Man Bluesが白眉です。もしこのアルバムが気に入ったのなら、ボーナス特典をコンプリートした初回盤のレコードを手に入れてください。彼らの写真やライブの契約書のコピーなどが封入されていますよ!

The Velvet Underground - Loaded album cover

#20. The Velvet Underground – Loaded

時代の異端児ですら家賃を払う必要があります。ラスト・アルバムでは以前までの雰囲気は影を潜め、商業的なテイストに寄った作品となりました。結局、商業的に成功したとは言えませんが、Sweet Jane、Oh! Sweet Nuthin、Head Held High、Rock&Rollなど、ロックン・ロールが世界を変えた理由を垣間見ることができ、ファンに長年愛される名曲達が収められています。ルー・リードは、後のファースト・ソロ・アルバム「Walk On The Wilds Side」でようやくヒットに恵まれる事となります。

Derek & The Dominos - Layla And Other Assorted Love Songs album cover

#19. Derek & The Dominos – Layla And Other Assorted Love Songs

このアルバムは、ヘロイン中毒者の気持ちを少し理解することができる作品かもしれません。このアルバムが制作された当時、エリック・クラプトンは、友人のジョージ・ハリソンの妻であるパティ・ボイドへの禁じられた愛に胸を痛め、そしてヘロイン中毒の真っ只中でした。このアルバムの多くの曲では、彼女に対する思い、痛み、悲しみを歌っています。音楽評論家のデイブ・マーシュは「Layla」を聞いていると、まるで殺人や自殺を見ているようなものだとかつて評しました。うーん、正にその通りですね。

Cat Stevens - Tea For The Tillerman album cover

#18. Cat Stevens – Tea For The Tillerman

シンガー・ソングライター・ムーブメントを代表するアルバム「Tea for the Tillerman」は、当時キャット・スティーブンスが込めた感情を今もまったく失なっていません。近年、キャット・スティーブンスが話題になる事は多くありませんが、Wild World、Miles From Nowhere、Father and Sonなどの名曲は色褪せず、むしろ年を追うごとにその味わいが増しているように感じられます。もし、音質にこだわる場合は、 英 Islan Recordsから発売された初盤を手に入れてみてください。

Jimi Hendrix - Band Of Gypsys album cover

#17. Jimi Hendrix – Band Of Gypsys

ベーシストのビリー・コックスとドラマーのバディ・マイルスとFillmore Eastで録音されたこのライブアルバムは、どのジミ・ヘンドリックスの作品よりも、伸び伸びと自由に演奏をしているように感じられます。このアルバムは、ハイな陶酔、サイケデリックを想起させますが、それでいてハードでファンキーなサウンドがリスナーの耳を奪います。ギター・ファンの方は、Machin Gunのギター・ソロを聴いてみてください。一聴の価値があると思いますよ!

George Harrison - All Things Must Pass album cover

#16. George Harrison – All Things Must Pass

ザ・ビートルズの寡黙なメンバーは、ジョンとポールという巨大な壁に阻まれ、自身の曲をザ・ビートルズのアルバムに収録できないことに辟易としていました。ジョージ・ハリソンはザ・ビートルズに在籍中にいくつかの実験的なレコードをリリースしていましたが、この「All Things Must Pass」は彼の公式ソロデビューであり、My Sweet Lord、Isnt It A Pity、What Is Life、If Not For Youなどの名曲が詰め込まれていますジョージ・ハリソンのソロ最高傑作にして、ロック界初の3枚組LPアルバムとして音楽史にその名を刻んでいます。

Van Morrison - Moondance album cover

#15. Van Morrison – Moondance

ヴァン・モリソンにとって最大のヒット・アルバムにして、壮大な芸術作品とも言える一枚。これは決して簡単なことではありません。A面にはAnd It Stoned Me、Moondance、Crazy Love、Caravan、Into the Mysticが収録され、まるで彼のベスト・ヒット・コレクションかと思うぐらい片面に名曲が並びます。このレコードが気に入らないという人は、音楽不感症かも知れませんよ。

Creedence Clearwater Revival - Cosmo

#14. Creedence Clearwater Revival – Cosmo’s Factory

ジョン・フォガティーの非凡な才能が故のワンマンな気質の結果、最終的にバンドは解散してしまいますが、このアルバムではやはり彼のソング・ライティングの才能が遺憾なく発揮されています。特にTravelin ’Band、Who’ll Stop the Rain、Run Through the Jungle、Lookin’ Out My Back Doorはポップス/ロックのお手本のような楽曲で、このアルバムが絶大な人気を誇る理由がそこにあります。

David Bowie - The Man Who Sold The World album cover

#13. David Bowie – The Man Who Sold The World

デイビッド・ボウイはこの3枚目のアルバムでアーティスティックなアプローチを見出し、ここに収録された曲で後のアルバム「The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders From Mars」や「Aladdin Sane」について示唆しています。ミック・ロンソンによるギター主導なサウンドは、重厚かつトリッピーで、演劇的であり、多くのデイビッド・ボウイのファンにとって重要な一枚となっています。

The Doors - Morrison Hotel album cover

#12. The Doors – Morrison Hotel

ドアーズが嫌いな人でも認めざるを得ないアルバムだと思います。Roadhouse Bluesは、気取らないジム・モリソンのヴォーカルをフィーチャーした間違いないジャム・セッションであり、アルバムの始まりを期待させるイントロ・ソングです。本作はブルースをベースとしたハードなロックンロールで、バンドのアートダメージな気質をより前面に押し出したアルバムです。

Santana - Abraxas album cover

#11. Santana – Abraxas

サンタナはファースト・アルバムのサウンド、持ち味であるインプロビゼーション精神をキープしつつ、様々なアイデアを盛り込んだこのラテン・ロックの名盤を完成させました。もちろん、カルロス・サンタナのギタープレイがこのアルバムでも最大の魅力の一つと言えるでしょう。Black Magic Womanは発売から50年を迎えますが、一度としてその輝きを失った事はありません。

Neil Young - After The Gold Rush album cover

#10. Neil Young – After The Gold Rush

クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングを去った後、ニール・ヤングは完璧なアルバムを携えて帰還しました。彼のディスコグラフィーからベスト・アルバムを選び出す事は非常に困難ですが、恐らくこのアルバムで間違いないと思います。ロック、フォーク、カントリーをスムーズにブレンドさせた楽曲が並び、アルバム中で最も有名な曲 Southern Manでさえ霞んでしまう程に充実した内容です。近年、彼の多くの作品が本人による監修で再発化され、素晴らしい音質、手頃な値段で入手可能です。

Miles Davis - Bitches Brew album cover

#9. Miles Davis – Bitches Brew

このアルバムは保守的なリスナーには、恐らく向いていないでしょう。マイルス・デイビスは本作で進化的で、革命的なサウンを創り出し、本人だけでなくジャズ自体にも大きな変革をもたらしました。ジャズ、ロック、エクスペリメンタル、ファンク、アヴァンギャルド… 全てを内包し、唯一無二な世界です。

Deep Purple - In Rock album cover

#8. Deep Purple – In Rock

一時期はクラシック・ロックの化石として葬られた感もあるディープ・パープルですが、近年では懐古主義的な視点から多くの支持を再び得ています。そして、このアルバムが大きな理由の一つだと言えます。リッチー・ブラックモアによる攻撃的なギター・リフによるアグレッシブなサウンドと、プログレッシブ、サイケデリック・ロックの要素を持ったハード・ロックの金字塔の一つです。

Crosby, Stills, Nash & Young - Déjà Vu album cover

#7. Crosby, Stills, Nash & Young – Déjà Vu

CSN&Yはその時代を象徴するバンドであり、カウンター・カルチャー世代にとって青春のサウンドトラックの一枚だと思います。愛、信仰、希望、そして反抗のメッセージはカウンターカルチャーを活性化させ、収録曲のCarry On、Woodstock、 Our Houseは私たちの両親、または祖父母に笑顔、そして涙をもたらしたかも知れません。

Simon & Garfunkel - Bridge Over Troubled Water album cover

#6. Simon & Garfunkel – Bridge Over Troubled Water

歴史上最も売れた楽曲の1つであるBridge Over Troubled Waterは、サイモンとガーファンクルのデュオとしてのラスト・ソングとなりました。タイトル曲は皆さんご存知の名曲ですが、Ceciliaも現在聞いてみてもフレッシュで、色褪せない名曲だと思います。The Boxerに至っては芸術作品です。もし、シンガー・ソングライターがお好き、いやお好きでなくてもこのアルバムはあなたの為のものです。

Pink Floyd - Atom Heart Mother album cover

#5. Pink Floyd – Atom Heart Mother

Atom Heart Mother」はピンク・フロイドを代表するアルバムではないと、ある文脈からは言えるかも知れません。というのも、このアルバムは彼らの作品中、最も売れなかったアルバムの一つなのです。しかし、ピンク・フロイド・ファンには新たな音楽を求る探究心を持った方達が多く、商業的な成功など気にしないでしょう。タイトルトラックは、オーケストラとクワイアーをフィチャーしA面を丸々利用したコンセプチュアルなインスト・トラックです。 志を同じくしたムーディー・ブルースよりもはるかにストレンジな挑戦だったのではないでしょうか。

The Beatles - Let It Be album cover

#4. The Beatles – Let It Be

ご存知、ザ・ビートルズの最終アルバムとなる「Let it Be」ですが、前作となる「Abbey Road」が一番最後に録音されたそうです。 フィル・スペクターのプロダクションをお気に召さない方もいらっしゃいますが、それでもこのアルバムはザ・ビートルズです。むしろ、彼らのアルバムでも所有する価値ある良作と言えるでしょう。このアルバムにはジョン・レノン作のAcross the Universeを始め、非常に素晴らしい曲が収められていますが、ポール・マッカートニーによる珠玉のメッセージ・ソング、Let It BeThe Long and Winding Roadに注目が集まる所でしょう。

Let It Be」の最もコレクタブルなバージョンは、ブックレットが付属した初盤のボックスセットなのですが、完品であれば数百ドルはくだらないでしょう。しかし、15歳でザ・ビートルズのコレクションを始めている君、通常バージョンであれば簡単に見つけることができますよ。

Black Sabbath - Black Sabbath album cover

#3. Black Sabbath – Black Sabbath

この一言は一部の人には衝撃を与えかも知れません、「Black Sabath」は「Paranoid」よりも歴史的に重要な作品です。ヘビー・メタルの起源については永遠に終わる事のない議論だと思いますが、多くの人にとってこのアルバムはヘビー・メタルのすべてが詰まったレコーディングであり、ロックン・ロール愛好家であればこのマスター・ピースを所有することは、道徳的義務と言っても過言ではないでしょう。リリースから50年が経った今なお、名曲 Black Sabathのオープニングリフは、あなたの内臓までも揺さぶるピュアな音楽なはずです。

Black Sabbath - Paranoid album cover

#2. Black Sabbath – Paranoid

レコード・コレクターの鼓動を高ならせるものはこの世に幾つかありますが、その一つはVertigoの渦巻ラベルを発見した時でしょう。20人のコレクターに自身のベスト・コレクションを聞いてみてください。きっと15人はブラック・サバスのVertigo盤を挙げると思います。そこには理由があります。この渦巻ラベルの良いコンディションのレコードを手に入れてみてください。間違いなく傑作だと感じるでしょう。初期米盤のキャピトル緑色ラベルのプレスも非常に素晴らしいサウンド・クオリティで、現在、枯渇の一途を辿っています。しかし、何れの盤にせよ、このアルバムに収められている楽曲は音楽的にも非常優れており、必聴の価値があります。

Led Zeppelin - Led Zeppelin III album cover

#1. Led Zeppelin – Led Zeppelin III

Led Zeppelin “III”はレッド・ツェッペリンの最盛期に、恐らく最も自由な形で制作されたアルバムです。今回ご紹介した1970年に発売されたレコードの中で、最もウォントが多いアルバムとなりました。(その数なんと22万人!)初期プレスのジャケットには円盤ギミックが付属しています。確かにギミック無しのジャケットで所有することはあまり面白くありませんが、そんな事はどうでも良くなるぐらい素晴らしいアルバムです。説明する必要はありませんよね!


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