レコ・ジャケがアート的価値を持つとき

20世紀の中で最もアイコニックなデザインと言えば、いくつかのレコード・ジャケットが思い浮かぶのではないでしょうか。ビートルズの「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」、ミニマリズムの極みともいえるジョイ・デヴィジョンの「アンノウン・プレジャーズ」のアートワークなどを思い浮かべる方も多いと思います。

どのアートワークがマスター・ピースとなるのかはそれぞれの趣向によって分かれる所ですが、多くのレコード・コレクターがマーヴィン・ゲイの「ワッツ・ゴーイング・オン」やニルヴァーナの「ネバー・マインド」のような名盤とされるレコードをフレームに収めて、自宅の壁に並べています。ヴェルベット・アンダーグラウンド・アンド・ニコのデビュー・アルバムは、伝説的なポップ・アーティスト、アンディ・ウォーホールによってデザインされたことで有名ですが、このジャケットは20世紀を象徴する一枚だと言えるでしょう。初盤のジャケットには、白いスリーブにピンクのバナナ果実がプリントされ、その果実の上に黄色いバナナの皮のステッカーが「ゆっくり剥がして、見てください」という説明とともに貼られています。とてもウィットに富んだ芸術的、天才的なアイデアです。

andy warhol velvet underground and nico bananaThe Velvet Underground & Nico ‎– The Velvet Underground & Nico (1966) | Andy Warhol

最も影響力のあるアルバムの1つである、このヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコのアルバムはそのデザインの秀逸さから多くの人によってコレクションされ、バナナの皮のステッカーが剥がされていない美品、初回オリジナル盤は2000ドル辺りで取引されています。

もし、アンディ・ウォーホールがこのアルバムを個人的にシルクスクリーン・プリントで制作した場合はどんな価値が生まれるのでしょうか?その疑問は、私たちをバンクシーのアートワークへと導きます。

バンクシーは、現在、巷の話題となり、世界で最もコレクションされているモダン・アーティストの一人です。驚くことにこのデジタル社会の現代で、バンクシーは未だ匿名のアーティストのままです。彼のユニークなスタイルはステンシルを多用したウォーホルと概念的に共通するものがありますが、彼のキャンバスは彼の故郷であるイギリスの民家の壁、またはガザ地区にある壁など、不特定な場所となっています。そして、彼によって描かれた壁は取り外され、オークションで高額な値段で取引されています。最近では、イギリスのノッティンガムに描かれた壁画がチェーンで繋がれた自転車ごと、盗難に会う前に地方自治体によって取り除かれました。

バンクシーは彼のキャリアの初期に、12インチ・シングルやアルバムのレコード・ジャケットをデザインしています。ものによっては、彼自身の手でスプレー・ペインティングされ、コレクターに取って血眼なコレクタブル・アイテムとなっています。もはや、彼のデザインしたジャケットはコレクタブルな「レコード」という範疇を超え、コレクタブルな「アート」の領域に達し、今ではオークションやDiscogsで高値で販売されています。

Capoeira Twins ‎– 4 x 3 - Blowpop Records

Capoeira Twins ‎– 4 x 3 (1999) | Banksy

彼の作品中、最もレアだとされるレコードは1999年にBlowpop Recordsから発売されたカポイェラの「4 x 3」です。自動車の前に佇むマタドールがスプレー・ペイントされたジャケットのプロモーショナル・コピーなのですが、100枚しかプレスされておらず、現在では数千ドルで取引されています。ちなみに、バンクシーのデザインが施されていない通常盤のレコードは、ケンタッキー・フライドチキンのバケット程の値段で購入可能です。また、2002年にバンクシーはロイクソップというノルウェーのアーティストのデビューアルバム「Melody A.M.」に、Röyksopp(ロイクソップ)のロゴと何本かの木を100枚のコピーに描きました。そして、そのレコードも現在では数千ドルとういう値段で取引されています。

Dirty Funker ‎– Let’s Get Dirty (2006) | Banksy

次にご紹介するバンクシーの作品は、ダーティ・ファンカーの「レッツ・ゲット・ダーティ」の12インチ・シングルです。この作品にはバンクシーとしての公式クレジットはありませんが、このアートワークではウォーホールの有名な肖像画シリーズをオマージュしています。モチーフとなっているスーパー・モデル、ケイト・モスの目にバーコードがあるバージョンと無いものが存在します。ダーティ・ファンカーは、2008年の「Future (Remixes)」、2009年の「Flat Beat」の12インチ・シングルでもバンクシーをフューチャーし、バンクシーの象徴でもあるネズミやヘリコプターが描かれています。

みなさんがご察しの通り、その人気が故に今回ご紹介したレコードが手頃な値段でDiscogsで販売されることはめったにありません。とは言っても、比較的手ごろな予算でバンクシーのデザインしたレコードを買うことが出来ない訳ではありません。例えば、ワン・カットの「 Cut Commander 」(1998)や「Mr. X/Rhythm Geometry 」(2000)、ルーツ・マヌーヴァの「Yellow Submarine 」(2002)は、まだ500ドル以下で購入できるチャンスがありそうです。更に、ブラー「 Think Tank (2003) 、ブラック・トワング「Kik Off」(2002)は、もう少し手ごろな値段で購入できるかもしれません。Rammellzee and K-Rob ‎– Beat Bop

Rammellzee and K-Rob ‎– Beat Bop (1983) | Jean-Michel Basquiat

他にも多くの有名アーティストが、レコード・ジャケットをデザインしています。ジャン=ミシェル・バスキアは、短命に終わり、ほとんど音源が残されていないバンド、グレイで演奏しました。しかし、バスキアは1983年にTartown Recordから500枚のみリリースされた、ラメルジー・アンド・ケー・ロブの「Beat Bop」のアートワークとプロデュースを担当しています。このアルバムの初回プレスも前述のレコードと同じく数千ドルで取引されていますが、過去に何度か再発されており、最近では2020年にMr. Bongoからも再リリースされています。どうやら近年では再発盤も高騰しつつあるようです。

ニューヨーク現代アート・シーンのもう一人の重要人物、キース・ヘリングは多くのレコード・ジャケットにデザインを残しています。有名どころでは、シルベスター「 Someone Like You」、RUN DMC「Christmas in Hollis」デヴィッド・ボウイ「Without You」、ピーチ・ボーイズLife Is Somethingなどまた日本の音楽フェスティバルのテーマ曲のシングルにもデザインを残しています。珍しいものでは、グロリア・フォン・トゥルン・ウント・タクシス侯爵夫人の誕生日イベントの招待状として制作されたピクチャー盤 7インチ・シングルがあります。これは、キース・ヘリングがジャケット、レコード盤をデザインし、250枚のみが製作されました。Discogsマーケットプレイスにこれまで登場したことはありませんが、もし今後、販売される機会があれば、少なくとも4000ドル辺りで販売されるのではないかと予想されています。

keith haring run dmc christmas in hollisRun D.M.C. ‎– Christmas in Hollis (2014 Reissue) | Keith Haring

そろそろスプレー・ペイント(ご紹介できる作品)が足りなくなってきたので、最後にウォーホールのアートワークをご紹介したいと思います。1950年台のケニー・バレルの作品、「Kenny Burrell」(1956) や「Blue Lights Vol. 2」(1958)は、彼の署名入りで描かれたアート・ワークを配しています。ブルー・ノート・コレクター、ウォーホール・コレクター、両者から注目されるアルバムです。

レコードのジャケットにシルク・スクリーン、またはオリジナル・アートをデザインするアーティスが世界中に存在し、そのレコードがDiscogsで販売されています。そのレコードの中にはSUBWAYのターキー・サンドウィッチ程の値段で購入できるものも存在すると思います。しかし、問題なのは誰が次世代のウォーホール、ヘリング、バスキア、はたまたバンクシーとなるか、誰も知る由が無いということです。レコードのジャケットと言えど、各々の芸術的価値観が試され、または後の時代が来るまで誰が評価されるかはわからないという点では、正にアートの世界と言えるのではないでしょうか。


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