Discogs 高額取り引きレコード Top 100 (2005年〜2020年)

生粋のレコード・コレクターとは、いかなる場合でもレコードを追い求め、あらゆる手段を講じてレコードを手に入れてきた人達でしょう。セール・コーナーから掘り出しものが見つからない場合は、新譜を買い続けることで自身のレコード・コレクションをアップデートし、または、時として大枚を叩いてレアなレコードを手に入れてきたのかもしれません。

しかし、そんな方達の中にも一枚のレコードに4万ドル（約420万円）を支払った方は、そうそういらっしゃらないと思います。

2018年以来、プリンスの 「Black Album」がDiscogs史上、最も高額で取り引きされたレコードとして君臨し続けてきました。しかし、そのまさか、紫を纏った王子はその座位を2020年の12月に明け渡しました。そうです、最も高額で取り引きされたレコードが昨年末に更新されたのです。しかも、大幅に。

ということで、今回はDiscogsマーケットプレイを開始して以来の高額取り引きレコード、100枚をご紹介したいと思います。以下にそのTOP 100が掲載され、その最上段には新たに最高額レコードとなったScaramanga Silk「Choose Your Weapon」が坐しています。

このTOP 100にはLP、EP、 7インチ・シングル、ボックス・セットが含まれており、ここにある全てのレコードはDiscogsマーケットプレイスで注文され、支払いまで完了し、取引が終了されたものです。同タイトルのレコードが複数回登場していますが、これは幸運にもそのレアなレコード達が、Discogsマーケットプレイスに姿を現したということです。（取り引き額は販売された当時のレートで米ドルに変換されています。）

 

イギリス出身のDJ、Scaramanga Silkは2008年からシングルとEPをリリースし続け、2016年に1st フル・アルバム「Designer Scribble」をMicro Spiralからリリースしています。今回、最高取引額となった「Choose Your Weapon」は見開きジャケットで、同内容を収録した12インチとCDシングルが同封され、Immyartによるアート・ピースとポエムが付属されているとデータベースには記載れています。そして、シリアル・ナンバー付きの20枚しか存在しないとのことです。

「この作品のメッセージを最も効果的に表現するために、音楽、アート、詩の3つの媒体を通して伝えようと考えました。これらの3つ媒体は、それぞれ固有の表現方法として作用するだけでなく、この3つを通して一つの表現としても作用させることが目的でした。」とScaramanga SilkはDiscogsのインタビューで語っています。

ある情報によると、この作品がリリースされた直後にeBayで654ドルで取引され、レコード・コレクターの間で注目を集めたようです。しかし、なぜ、今回4万ドルという桁違いの額に跳ね上がったのかは謎に包まれたままです。Discosgのデータベースにもあまり情報が記載されていません。５人のユーザーがウォントリストに登録し、３人のみがこのレコードを所有しているとされています。（この記事の英語版が公開された後、欲しい人は63人、所有している人は8人(？)にまで増加しています。）出品された際の情報としては、コンディションは「ミント (新品/未使用)」、そして、商品説明欄には「『メガ・レア』、ナンバリング『2/20』、インフォメーション・シート、本人によるサイン付きレコード、CD、アート・ピースが付属」と記載されていました。

「今回、購入した人もきっとこのレコードに何か特別なコネクション（関係）がある人なのではないでしょうか。」とScaramanga Silkは話しています。そして「この作品『Choose Your Weapon』は、その人にとって特別な意味を持つものなのでしょう」とも語っています。

このレコードを手にする次のチャンスは直ぐにはやってこないと思いますが、この機会にScaramanga Silkの作品を手に入れたいと思われたら、彼の1st フル・アルバム「Designer Scribble」はお手頃な値段で販売されていますよ。

この「 Black Album」にはかなり興味深いサイド・ストーリーが付随し、この作品が高額になった理由が少し理解し易くなると思います。ファンクのバイブルになると噂されていたこのアルバムは、1987年の後半に本来リリースされる予定でした。このアルバムに対して最初に計画されたマーケティングとデザインは、タイトルもクレジットも何もない、掴み所のないものでした。（意図的にこのように計画されたのですが）

発売直前にプリンスは何かしらの啓示を受け、「このレコードは邪悪なものとなる」と信じ、生産されたレコードを全て回収し、破棄してしまうようにレコード会社へ要求しました。しかし、数枚のコピーがその難を逃れ、市場に流通してしまいました。そのため、このレコードは非常に高い需要を持っています。アメリカ盤のプロモーション・コピーは15,000ドルで取り引きされ、今回のTOP 100の6位にランクしています。しかし、その値段のほぼ2倍の額でカナダ盤が取引されたのです。そのレコードというのは、カナダのプレス工場で破棄される予定だったものを、最後の最後に工場員が救出した未開封の一枚でした。

このカナダ盤の「 Black Album」は2018年から2年の間、Discogsで最も高額で取り引きされたレコードとして君臨してきましたが、遂にその座を譲る日が訪れました。

“Love Me Do” は、ザ・ビートルズの記念すべきデビュー・シングルです。しかし、ここで紹介するUK盤 7インチ・プロモ・シングルは単なる古いレコードではありません。恐らくこの曲は初めにレコードでプレスされたはずですが、1950年台後半には何らかの形で存在していたようです。バンドの言い伝えによると、この曲はポール・マッカートニーによって描かれ、ジョン・レノンが手を加えたものだそうです。そして、レノン – マッカートニー名義の初作品となりました。

このレコードのレーベルをよ〜く見てください。あることに気がつくと思います。実は名前にスペルミスがあり、マッカートニーが「マクアートニー (McArtney)」 と誤表記されています。

カラー・ヴァイナルやエクスクルーシヴなアルバム・アートを持つ限定盤の様に、ミス・プリントもその限られた個体数のため、筋金入りのコレクターにウォントされています。このプロモ盤はDiscogsでも過去に数回取引さているので、このレコードの希少性についてはみなさんもご存知だと思います。Discogsマーケットプレイス上で初めて取り引きされた2015年は1,300ドルでしたが、直近では9,700ドルで取り引きされています。価格は少し落ちたいようですが、最高取引額は$ 15,000となっています。

 

それでは、これまでにDiscogsで高額取引されたTOP 100の残りのレコードをチェックしてみましょう！

Most Expensive Records

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