残念なことに、私達が敬愛するアーティスト達は時として突如この世を去ってしまいます。これは、特に長年の音楽ファンにとっては避けられない運命で、限りある生命を持つ私たちの宿命だと思います。この宿命は通年であれば受け止められる出来事なのかもしれませんが、2020年、私達は延々と暗いニュースに支配され続け、これまで以上に偉大なる才能の損失が大きかったように感じます。
今回ご紹介するリストは、昨年亡くなった全てのアーティストを網羅するものではありませんが、世界的に影響を与えたアーティスト達を多く含んでいるはずです。私がここで書き記す彼らへの言葉は、彼らの偉大なるレガシーと音楽の一部を語るに過ぎず、まだ彼らを知らない方がこれから彼らの栄光について触れる出発点になればと思います。これまでに創造された音楽は幸にして、レコードあるいはストーリミング・サービスとして存在し、私達はその失われた才能にアクセスすることができ、後世に伝えることが可能です。それが、残された私達、音楽ファンにとって残された仕事であり宿命なのかもしれません。
Bill Withers
1971年の「Ain’t No Sunshine」で最初のヒットを達成した際、ビル・ウィザースは「きっとこれはマグレに違いない」と思い、製造業の仕事を辞めるつもりはありませんでした。そんな彼の思いとは裏腹に、その後、R&BのTOP 20 チャートに 13曲ものヒット曲を送り込み、3つのグラミー賞を獲得しました。彼はソウル/ R&Bの伝説となり、2015年にはロックの殿堂入りを果たしました。
Essential song: “Ain’t No Sunshine”
Justin Townes Earle
偉大なるカントリー・シンガー、スティーブ・アールを父に持ち、そしてその父が師と仰ぐタウンズ・ヴァン・ザントをミドルネームに持つカントリー/フォーク・シンガー、ジャスティン・タウンズ・アール。父と師の足跡を着実に追い、ロカビリー、ソウル、そしてナッシュビル・カントリーの影響をエネルギッシュにそしてハートフルに歌い込み、生涯8枚のアルバム制作しました。
Essential song: “Maria”
John Prine
ボブ・ディランやクリス・クリストファーソンなどのシンガー・ソング・ライター仲間に愛されたイリノイ州出身のジョン・プライン。老夫婦、麻薬中毒のベトナム帰還兵、またはイエス・キリストの不在と言われた時代など、アメリカの衰退期にあった苦悩、または喜びをテーマとして取り上げ、豊かな文学的な表現で多くの佳曲を産み出しました。
Essential song: “Angel From Montgomery” (and our favorite covers)
Little Richard
現在、ロックンロールと呼ばれている音楽の礎となった偉大なアーティストの1人であり、この惑星で最も華やかな人生を歩んだアーティストの一人とも言えるでしょう。今回ご紹介するアーティストのほとんどが、意識か無意識の内に、リトル・リチャードに影響を受けているはずです。
Essential song: “Tutti Frutti”
MF DOOM
90年代初期からヒップホップ・グループ KMDのメンバーとして活動し、鋼鉄の仮面を身に纏った後はソロ活動のみならず、マドリブやデンジャー・マウスなど様々なアーティストとコラボを果たし、アンダーグラウンド・ラップ界のヒーローとして多くの作品を残しました。ヒップホップ・ファンにとって、2020年で最も大きな損失だったはずです。
Essential song: “Doomsday”
Neil Peart
ラッシュは、ニール・パートが加わる以前からグレートなロック・バンドでしたが、彼のドラミング、そして超文学的な歌詞によって、カナダの三人組を伝説的な地位まで到達させました。
Essential song: “Tom Sawyer”
Eddie Van Halen
エディ・ヴァン・ヘイレンがパイオニアとして切り開いた偉業に迫る他のギター・プレイヤーは、そういないのではないしょうか?ちなみに、マイケル・ジャクソンの「ビート・イット」でのギター・ソロは公式にクレジットされていないそうですが、その代わりにビールを1ケースとマイケルからのダンスレッスンを依頼したそうです!
Essential song: “Eruption”
Malik B.
マリク・Bはフィラデルフィア出身のジャズ・ヒップホップ・グループ、ザ・ルーツの創立メンバーであり、ブラック・ソートに引けを取らないリリカルでリズミックな偉大なるラッパーでした。
Essential song: “Respond/React”
Peter Green
ピーター・グリーンはフリートウッド・マックの発起人であり、バンド初期のブルース・サイケデリック・スタイルから、1970年に彼が離脱後に同グループが探求する、より明快で叙情的なスタイルの変遷の石杖となりました。
Essential song: “Oh Well”
Betty Wright
地元マイアミから全国区となったベティ・ライトは、ソウル・シンガーとしての成功を収めた後、グロリア・エステファンやジョス・ストーンなどの後進アーティストを指導し、更にトム・ジョーンズやダイアン・バーチなどのプロデュースも行いました。今回、ご紹介する曲は、メアリー・J・ブライジや小沢健二にサンプリングされた事で、知る人も多いのではないでしょうか。
Essential song: “Clean Up Woman”
Kenny Rogers
ケニー・ロジャースはファースト・エディションというグループでデビューし人気を博しましたが、ソロ転向後には更なる飛躍を遂げ、カントリー・ポップ界のスーパースターとなりました。彼はビージーズ、ライオネル・リッチー、メル・ティリスなどの大物ミュージシャンに提供された素晴らしい楽曲を多く世に送り出しました。ショー・ビジネス界きってのあご髭が似合うアーティストですね。
Essential song: “The Gambler”
Riley Gale
D Magazineのライターであるクリストファー・モズレーは、故パワー・トリップのボーカリスト、ライリー・ゲイルを称えた記事で、彼を「音楽シーンの外交官」と最高の賛辞を述べました。彼ほど、故郷であるテキサス州ダラスをレプリゼントし、あらゆる年齢、性別、人種のファンに受け入れられ、勇気付けたメタル・アーティストはいないでしょう。
Essential song: “If Not Us Then Who?”
Adam Schlesinger
アダム・シュレシンガーは、20世紀と21世紀で、最も才能のあるソング・ライターの一人だと思います。ファウンテインズ・オブ・ウェインで商業的な成功を収め、Crazy Ex-Girlfriendでテレビ業界での栄光を獲得し、「That Thing You Do!」のテーマ・ソングの作曲でオスカーにノミネートされました。非常に多くのアーティストと共に音楽制作をし、多作なアーティストでした。
Essential song: “That Thing You Do!”
Billy Joe Shaver
アウトロー・カントリーの仲間に愛されたシンガー・ソング・ライター、ビリー・ジョー・シェーバー。彼は、ウェイロン・ジェニングスの1972年のアルバム「Honky Tonk Heroes」のほぼ全ての曲でソング・ライティングの務め、キャリアの突破口を切り開きました。彼は、溢れる感情とウィットに飛んだ皮肉のバランスがとれた佳作を多くレコーディングしました。
Essential song: “Georgia on a Fast Train”
Jerry Jeff Walker
ジェリー・ジェフ・ウォーカーは60年代にグリニッチビレッジのフォーク・シーンから頭角を現し、ロマンティシズムを帯びたラフでタンブルな楽曲と共にアウトロー・カントリー・コミュニティ内で名声を得ました。多くの仲間に愛された彼は、ウェイロン・ジェニングス & ウィリー・ネルソンの「Luckenbach, Texas」で、彼の名が登場します。
Essential song: “Mr. Bojangles”
Helen Reddy
オーストラリア出身のシンガー、ヘレン・レディは1972年にフェミニストの国歌として名高い「I Am Woman」を歌い、一躍スターダムにのし上がりました。その後、映画や演劇などマルチなキャリアを積み、晩年にはセラピストとし活動しました。
Essential song: “I Am Woman”
Toots Hibbert
トゥーツ・ヒバートは、1968年に発表した「Do The Reggay」を通して、レゲエという音楽ジャンルを世に広めたアーティストして知られています。特に、彼のライブはエネルギッシュで、喜びに溢れたパフォーマンスでした。ウィリー・ネルソン、メジャー・レイザー、ガヴァメント・ミュールなどのアルバムにも参加し、その才能を遺憾なく発揮しました。ソウルフルで、ヴァーサタイル、そして素晴らしいアーティストでした。
Essential song: “Funky Kingston”
Charlie Daniels
チャーリー・ダニエルズはセッション・プレーヤーとして、ナッシュビルで多くのアーティストと共演し、ボブ・ディラン、レナード・コーエン、マーシャル・タッカー・バンドなどをバックアップしました。悪魔とフィドル・コンテストについて取引をするギター・プレイヤーを歌った「The Devil Went Down to Georgia」でクロスオーバー・ヒットを記録し、現在の(主にアメリカでの)カントリー・ミュージックの商業的な成功に貢献しました。
Essential song: “The Devil Went Down to Georgia”
David Roback
デイビッド・ロバックというギタリスト兼ソングライターが、マジー・スターのヒット曲「Fade Into You」を共作した人物だということを覚えていれば、それで十分かもしれません。しかし、ペイズリー・アンダーグラウンド・シーンの中心的グループのレイン・パレードのメンバーとしての日々から、マジー・スターとの最後のレコーディングまで、ロバックは素晴らしいネオ・サイケデリア、ドリーム・ポップの作品を世に送り出し続けました。
Essential song: “Fade Into You”
Florian Schneider
フローリアン・シュナイダーは、スクールメイト、そして共にクラフト・ワークを立ち上げたラルフ・ハッターと家庭用コンピューター、トゥール・ド・フランス、ネオンライトへ捧ぐ名曲を世に送り、過去40年間に渡りシンセポップ、エレクトロニック・ダンスミュージック、ヒップホップに多大なるインスピレーションを与え続けました。
Essential song: “The Robots”
Harold Budd
度々、コラボレーションを展開した盟友であるブライアン・イーノは、作曲家ハロルド・バッドを「ミュージシャンの体に閉じ込められた偉大な抽象画家」と呼びました。これは、ハロルド・バッドの長いキャリアの中で、コクトー・ツインズ、XTCのアンディ・パートリッジ、U2などの作品を通じて、生み出した大胆なカラーと印象的なサウンドについての賛辞でした。
Essential song: “First Light”
McCoy Tyner
マッコイ・タイナーは、典型的なポスト・バップのピアニストと言えるでしょう。ジョン・コルトレーン、ジミー・ギャリソン、エルヴィン・ジョーンズを含む強力なカルテットでプレイしたというだけで、彼の素晴らしさが伝わるはずです。同時代のプレイヤーの多くがフリー・ジャズやシンセサイザーの波に乗る中、彼はピュアなメロディー、アコースティックなスタイルに専念しました。
Essential song: “My Favorite Things”
Andrew Weatherall
イギリス出身のプロデューサー兼リミキサー、アンディ・ウェザウォールはダンス・ミュージック界で最も鋭い耳と感覚を持っていました。その才能は、プライマル・スクリーム「Screamadelica」、ベス・オートンの「TrailerPark」、そしてマイ・ブラッディ・ヴァレンタインやビョークのリミックスを聞けば一目瞭然だと思います。
Essential song: “Loaded”
Charley Pride
そのキャリアの中で「パイオニア」と呼ばれることの重みを背負うアーティストは、それほどいないのではないでしょうか。チャーリー・プライドは、その「パイオニア」としての名誉を持った黒人初のカントリー・スターでした。彼は(アメリカ、また白人アーティスが多くを占めるカントリー・ミュージックにある) 人種問題という長い道のりに、優雅さと謙虚さをもって歩み続けました。
Essential song: “Kiss an Angel Good Mornin‘”
Andy Gill
ギャング・オブ・フォーのサウンドの魅力の一つは、アンディ・ギルの持つギター・サウンドだと思います。彼の痛烈なサウンドは、同グループのデビュー作「Entertainment」、そして、その後の40年間に渡るラインナップの変更、商業的な成功への試み、そしてスタジオ・レコーディング、ライブを通して鳴り続けました。
Essential song: “Love Like Anthrax”
Jimmy Heath
70年以上もの間、ジミー・ヒースというテナー・サックス奏者の勢いは、減速することが無かったように見えます。偉大なるジャズ・ジャイアンツと共に精力的に活動し、1940年代後半のディジー・ガレスピーとの作品から死後に発売された2020年のアルバム「Love Letter」まで膨大なディスコグラフィーを残し、その生涯を終えました。
Essential song: “For Minors Only”